2008年10月15日

X35全日本を振り返って

RZ3H8670.jpg
9艇により行われたX35全日本。写真は好スタート後、ポートに返した〈ESPRIT〉。photo by Junichi Hirai

 13日まで西宮で開催されたX35全日本選手権。国内では最大サイズのワンデザインキールボートレガッタであり、バルクヘッドマガジンは非常に興味深く取材させてもらいました。外洋系選手権が低迷しているといわれる昨今。昨年から国内に登場したこのワンデザインクラスに、ヒントが隠れているかもと思えたからです。

 期待に違わず、レースの内容はすばらしいものでした。ぼくはしばらくJ/24で活動していたので、ワンデザインレースの展開を予想できましたが、本大会は35フィート艇の迫力もプラスされて、手に汗を握りながら観戦させてもらいました。特に最終日の〈QUETEFEEK〉、〈NEUEROVE〉、〈CEREZO〉の三つ巴は、選手の心情やプレッシャーまで伝わってくるような、すばらしい戦いだったと思います。

 印象的だったのは、風待ちの末におこなわれた最終日第1レースです。スタートに失敗した〈QUETEFEEK〉を尻目に〈CEREZO〉〈NEUEROVE〉がフリートをリード。上マークへ到達間際、というところでノーレースとなりました。

 網を引いた漁船がレース海面に入り込もうとしていたため、レース運営はやむを得なくN旗をあげました。先行していた〈CEREZO〉〈NEUEROVE〉としては納得のいかないところでしょうが、運営側は「最後までレースを中止にさせたくない」という強い気持ちから、漁船へ再三の忠告。静かで激しいケンカにも似たやり取りもありましたが、漁船が進路を変更する様子がまったくなかったためにやむを得ずノーレースになった経緯があります(最終的にはコースに入る手前で漁船が進路変更しました)。

 しかし、この一時中断で勝負の流れは大きく変わりました。仕切り直した〈QUETEFEEK〉は、第3レースをトップフィニッシュ。これで弾みをつけ、後続チームに差をつけて優勝を飾ることになりました。「やっぱりヨットレースにはドラマがあるなぁ」。運営艇で取材をしながら、そんなことを考えていた次第です。

 さて、ここでバルクヘッドマガジンがX35全日本で感じたことを報告したいと思います。

■アマチュア・オーナードライブの戦い
 13日の記事でISAFクラシフィケーションについて書きましたが、X35のクラスルールではヘルムスパーソンをオーナー、もしくはグループ1の選手に限定されます。当然、オーナー自らドライブするチームも多くみられ、その場合クルーはドライブのサポートに徹することになります。オーナーとしては、ワンデザインレースの特性上、地元のクラブレースとは違ってハイレベルなドライブ練習を兼ねることになり、高い充実感が得られたことでしょう。

■若いセーラーによる活気あるムード
 先に述べたISAFクラシフィケーションの問題から、グレード3(職業セーラー)が規制されるために、アマチュア中心のチーム編成となります。グレード3の規制は、学生や社会人になりたての若い選手が乗るチャンスにもつながり、実際に若いセーラーの顔ぶれが目立っていたように思えます。優勝した〈QUETEFEEK〉の平均年齢は、聞くところによると31歳といいますから、若手中心のチームだったといえるでしょう。J/24フリートもそうですが、活気あるムードは若い選手たちを呼び込みます。

■ワンデザインに必要なシビアなコース設定
 関西ヨットクラブの運営は、すばらしく迅速で確実なものでした。水深が浅くマークを打ちやすいという理由もありますが、それでもたった2艇の運営艇で、1日に20回近くもマークを打ち変えたのですから、相当ハードだったといえます(今大会はヒッチマークもありました)。こうした運営艇の気合いは、選手へも伝わります。ヨットレースは参加選手が揃えばできるものではありません。運営、選手、審判、お互いの信頼の上にできあがるものということを強く感じさせられました。

■もっとヨットレース情報の発信を!
 昨年のプレ全日本後、日本X35ワンデザイン協会が設立されました。実際には、Xヨットの国内販売を手がける135イースト社が事務局を担当しています。ホームページもあるのですが、ここには基本情報だけで、残念ながら情報が少ないようです。X35はワンデザインボートですが、各水域クラブレースでの成績はどうなのか? ORCCやIRCのレーティングレースではどうなのか? また、パールレースのようなオフショアレースではどうなのか? などの情報を協会から発信してもらえると、X35を気になっているセーラーの興味はよりふくらむと思います。ぜひとも早い時期に、ホームページの充実、それに選手だけではなく、各メディアへの情報発信までもをお願いしたいところです。

■国内選手権の先にある世界選手権へ
 ワンデザインキールボートの魅力として、世界選手権のような海外レースへ出場できることがあげられます。今年、イタリアで開催されたX35世界選手権は10カ国54艇が出場しました。この参加艇数に驚いたのはバルクヘッドマガジンだけではないでしょう。また、スペイン・マヨルカで開催されるCopa del ReyではX35部門ができ、今年の同大会では25艇の参加がありました。日本チームも世界選手権や海外レースを目標に据えることで、活動の幅は大きく変わってくることでしょう。来年の世界選手権はドイツ・キールで開催されるようです。

 と、ザッとではありますが、X35全日本を取材して感じたことを羅列してみました。たしかに、このクラスがおもしろいのは、ある意味当然で、(以前にも書きましたが)同サイズ艇が5艇集まればヨットレースはおもしろくなります。

 また、たとえばジャパンカップのような外洋選手権と比べるのはあまり意味のないこと、ということも認識しています。ワンデザインキールボートとそれ以外では、ボート建造(購入)のコンセプトは大きく異なるのですから。しかし、参加したオーナーの満足感と若いセーラーが参加したくなる雰囲気は他のレガッタも参考になるのではないでしょうか。

 来年のX35全日本にも期待します。

RZ3H8223.jpg
ライバルチームは「QUETEFEEKはボートスピードがあった」と話していましたが、その大きな理由はハイクアウトだと思います。一番がんばってました。photo by Junichi Hirai

◎日本X35ワンデザインクラス協会
http://www.x-35.jp/

======================================
わたしたちは走り続けるセーラーを応援します
BULKHEAD magazine supported by
トーヨーアサノ
SWING
パフォーマンス セイルクラフト ジャパン
ノースセールジャパン
プラネット・グリーン
ハーケンジャパン
ファクトリーゼロ
SOHO
シエスタ
posted by BULKHEAD at 19:56| Comment(3) | キールボート
この記事へのコメント
あれ?
私だけハイクアウトをサボってるような?
ちょっと見られたくないショットかも??

ところで選手の立場での視点から今シリーズを振り返り、今までにない特別な感動がありました。
それはなぜか?
ワンデザインレースでのオーナーヘルム。
そこに大きな理由があると考えます。

J24と変わらぬシビアなレース展開の中でクルーはオーナーに対し、勝つために限りなくプレッシャーを与え続けます。
そのプレッシャーに対し、必死に答えようとするオーナーの姿勢がまたクルー自身を自然とプッシュする。
そんな好循環の中でさらに優勝することができたのですからその喜びと言ったらとても格別なものがありました。

J24は若手の登竜門として盛り上がり、JAPAN CUPは一切の妥協のないグランプリレース(で、あって欲しい)、その中間に位置するX35OD。
若手やオーナーがヘルムだが集まるクルーはJAPAN CUPなみ。
誰もが関心を引くシリーズだったと思います。

が、しかし記事に触れていますように情報がかなり少ないため大会に参加していない人からすれば所詮、対岸の火事に過ぎなかったのでは?とも感じます。
また昨年と同じ参加数だったことが今後、成長していくのだろうか?との疑問が湧いてきます。

ものすごく楽しい大会だと思うからこそ、非常に危機感を感じ、なにか訴えかけることが出来れば、と微力ながらコメントさせていただきました。
Posted by ゴリ at 2008年10月15日 23:36
ワンデザイン+オーナーヘルムという、アメリカで好評なスタイルが、いよいよ日本でも実現したって感じでしょうか。(思えば、98年発足の1D35協会が、オーナーヘルムのハシリか?)

情報提供は、必須ですよね。
それが、どれだけなされているかで、「どれだけ盛り上がったレガッタか」を、非参加者は推し量ることになっていると感じています。

逆言えば、現実にはショボイ印象のレガッタでも、広報次第で、「スゴーク盛り上がって、スゴーク楽しかった」レガッタに映り、次回大会の弾みになります。(そんな誤解は何度も通用しないので、名実共に・・・・が必要でしょうケド)
Posted by ゆう at 2008年10月16日 18:02
同感。「広報」の力は本当に大きいと思います。
レガッタ関係者は、まず広報をしてくれる方々には感謝し、また敬意を払わねばなりませんし、自ら広報マンにもならなければなりませんね。
Posted by sen at 2008年10月20日 11:59
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。