2009年03月13日

ユース強化記事に寄せて

 11日に掲載した「ユース強化を進める日本」の記事に、元ユースワールド代表さんから投稿をいただきました。コメント欄に投稿されたものですが、自らがユースワールドに出場し、世界の同年代と戦って感じたことは大変興味深く、バルクヘッドを読んでいる若いセーラーにも参考になるのではと思い、記事として紹介させていただきます。元ユースワールド代表さん、投稿ありがとうございます。

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 日本セーリング連盟のユース選手強化、大いに賛成すると同時に大変心待ちにしていました。バルクヘッドマガジンでも、ユース選手に焦点を当てた記事やニュースを紹介していかれるとの事でとても賛同していますし、楽しみにしております。

 私は1990年代にユースワールドに2度代表になり出場しましたが、セーリング先進国と呼ばれる国々の組織力をはじめ選手層の厚さなど全ておいての違いと、ユースに対する認識の違いに圧倒されたのを今でも覚えています。

 その後、2005年に韓国で行われたISAFユースワールドの時には大会のサポートとして違う形で再び参加する機会がありましたが、日本との格差はますます広がっていることを目の当たりにしショックを受けました。

 日本では残念ながら「ISAFユースワールド」の知名度は高くありませんが、この大会は次世代のオリンピック選手が必ず活躍し経験する大会で、セーリング先進国においては、オリンピックに次いで力を入れている非常に大切な大会なのです。現在、世界のセーリング界で輝くラッセル・クーツ、ディーン・バーカー、ロバート・シェイド、ベン・エインズリーなど…英雄的存在の彼らも、かつてユース時代はここで勝ち注目され今に至っているのです。

 近年の日本人セーラーの活躍はディンギーやキールボート、マッチレースやアメリカズカップなど幅広く見られます。しかし、日本のセーリング競技はかつてアジアのリーダー的存在でしたが、オリンピックやアジア大会でのメダル獲得数はすでに置いていかれているのが現実です。

 昨年のOP世界選手権で女子チャンピオンが誕生したように最近の日本のジュニアレベルは世界的に見ても非常に高く、この年齢から海外遠征経験をした選手数や選手人口も多いのに、その先のこれらの大会で活躍したり目標にしている選手になると明らかに減っている事や、その割合と比較するとメダル獲得数は低い事にお気づきでしょうか?

 ジュニアから次のステップとしてインターハイ、インカレ、国体など日本にはとても大きなセーリング環境があるのに、どこかが違っているからです。それはジュニアを卒業し高校をはじめとする育成過程の問題や、ユースへの対応の遅れが原因である事は否めません。

 私が特に感じる事のひとつとして、高校生の艇種です。彼らが目標とするインターハイや国体にはFJ級とセーリングスピリッツ級が採用されていますが、どちらの艇も高校生が乗る艇にはあまりにもアンダーパワーなダブルハンドのトラピーズディンギーです。

 そのため、男女共に軽量チームがベスト体重なので育ち盛りの一部の高校生が減量をしている実態をご存知でしょうか? 昔は大柄な選手はスナイプ級があったのでまだ良かったのですが、現在は体格に合わせた艇種の選択肢がない実態と、セーリングの基本であるシングルハンドクラスがないことが非常に問題なのです。

 これらが原因で近年の日本のセーリング選手は小柄な体格のセーラーしか育っていないのが現状で、オリンピック種目でも470級が限界のクラスのセーラーがほとんどになり、人間の成長過程やアスリートの体格として逆行しているのです。

 また、各国の高校生(ユース)育成には、艇体や艤装品などのハード面で格差のないシンプルな艇種を選択し、セーリングそのもののソフト面の育成に重点的に力を入れている点も大きな違いのひとつです。

 セーリング先進国での代表的な育成プログラムは、OPを経験したジュニアセーラーが次のステップとして、シングルハンドまたはダブルハンドのインターナショナルクラスの艇種(ユースワールドやオリンピック採用艇種がほとんど)を中心に、体格や目標に合わせた選択ができる育成が各国のセーリング連盟が主体となり行われています。

 ジュニアセーラーが成長ていく過程として、次にシングルハンドを選択したセーラーは、レーザー4.7やラジアル→レーザー→フィンを経てスターなど…。ダブルハンドを選択したセーラーは、420や29er→470や49er→スターなど…。体格や能力に合わせた各艇種でステップアップし活躍したセーラーは、ビッグボートやマッチレースをはじめアメリカズカップのようなレースシーンで大活躍するのが世界的な育成プランです。

 現在決められた艇種でインターハイや国体に向けて頑張るのも大切な事ですが、高校生(ユース)セーラーは心身ともに一番成長しセーラーとして大きな夢を抱くとても大切な時期です。

 その一番大切な時の環境をもっと広い視野で環境を作り正しく選択し導いてあげるのは、コーチや監督などの関係者をはじめ先輩セーラーであり、今もセーリングを楽しみ支持し応援しているセーラーです。

 この問題はこれからの日本セーリングの未来においても本当に大切な事なのです。セーリング先進国が照準を置くユースワールドやオリンピックが全てとはいいませんが、セーリング競技に対する世間一般からの認知度や関心、メディアの多くはやはりオリンピックに目を向けられます。

 セーラーは勿論、セーリングに携わっているJSAFや県連など組織の役員、学校の監督やコーチ、ビルダーやセールメーカーなどの業者やメディアなど様々な関係者の方々、それぞれの環境や個々の事情・立場があると思います。

 自分が楽しんできたこの日本のセーリング競技を次世代のセーラーのために、そして彼らの夢のために少しでも良い環境残していくために、目先の事だけでなく先の未来を見越しながら、もっと世界にも目を向けて何が良いのか何が大切かをもう一度考え直し、セーラーとしてシーマンとして恥じない考えと信念を持ち続け行動して欲しいと思います。世界に誇れる日本のセーラーとして…。(文/元ユースワールド代表)

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posted by BULKHEAD at 07:52| Comment(4) | ディンギー
この記事へのコメント
大変わかりやすく、貴重な提言です。しかし、大筋のことはもう何年も前から各クラス、各水域、各クラブで叫ばれている内容です。ここからいつも話が止まってしまっているのです。
では、日本のセーラーの大部分が賛同するこの内容を阻害しているものとは何ですか?メーカーですか?団体ですか?有力国会議員ですか?JSAFの中にいるのですか?山崎達光会長の大英断ではいけない事なのですか?それとも、日本セーリング界のリーダーシップを取れる人材がいないのですか?地方にいる私からは、中央で起こっていることがよくわかりません。
Posted by 元ユースワールド選手の父 at 2009年03月14日 09:58
本当にわかりやすく、普通のセーラーにとっても大変興味深い記事でした。
ここまでま何も変わらないと言うことはウラ事情があるのかな。本当の原因が知りたいです。
そしてユース育成のより良い道が出来ることを願います!
Posted by セーラー(普) at 2009年03月14日 18:25
非常に感銘を受けました。日本のセーリングの将来において重要な案件だと思います。今後、中央においてこの議論が進むことを期待していますが、利害が膠着の原因であれば日本のセーリングの将来は暗いものであると感じてしまいます。そうではないと信じていますが・・・
Posted by 北海道のセーラー at 2009年03月15日 08:35
ステップアップ策等、具体的なことも必要ですが、キイとなるのは
@国際化
A情報公開と共有化
B組織・団体の障壁の排除
ではないでしょうか。
これはセーリングに限ったことではないかも知れませんね?

PS:国内最大級の草レース「同志社ウィーク」・・・
草レース?ではありません。
有力選手の招待、前夜祭での講演、OB主体の運営等々、これぞ見習うべきレガッタです。出場すればその偉大さがわかります。

Posted by S.F.Y at 2009年03月19日 21:27
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