2009年11月24日

チームアビーム、天下統一

 福岡小戸で5日間にわたり開催された470全日本選手権。最終日は上位10艇によるメダルレースがおこなわれました。メダルレースでは、オンザウォータージャッジが採用されるために8人が3艇のジュリーボートに乗ってレースを追いかけます。コースは上下6レグで下マークにはゲートが設けられました。

 国内の全日本選手権ではじめておこなわれるため、海外遠征に出る一部の選手をのぞいて、多くの選手ははじめてのことになります。メダルレースは五輪種目のほとんどの国際大会で採用され、これから五輪を目指す日本選手は必ず経験しないとならない必修科目。また、岸からも観戦できる近い場所でショートコースでおこなわれるという特徴があるため、通常のフリートレースとは違う「短距離走に似た」感覚も必要とされます。

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オンザウォータージャッジのメダルレースのために8名のジュリーと3艇のボートが用意されました。photo by Junichi Hirai

 さて、昨日までのポイントで早々と優勝を決めた原田/吉田ですが、メダルレースには必ず出場しなければならないため、もちろん参戦します。彼らにとってメダルレースは、ウイニングランでもあり気負いなく走れたようです。

 本日の注目は、わずか1点差の近藤/田畑と吉迫/大熊の対決。メダルレースは2倍ポイントが与えられるため、先にフィニッシュした方が勝ちという単純明快のガチンコ勝負です。2艇は、スタート前から緊張感を漂わせ、アウターサイドから並んでスタートしました。

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けん制し合いながら、上下に並んでスタート。スタートで近藤/田畑が前に出ました。photo by Junichi Hirai

 先手をとったのは、風下位置から好スタートを切った近藤/田畑です。タックを返し吉迫/大熊をの前を通った近藤/田畑は、相手をカバーするかに見られましたが、フリートが右海面に移動するのを見て、そのまま右海面へ。左へ伸ばす吉迫/大熊と完全にセパレートしました。

「風が弱く振れていたので、まずはスピードを優先しないといけないと考えていました。スタートがうまく決まったので、フリート全体をみながらの展開です」(近藤)

 近藤/田畑は右海面のパフをつかみトップ回航。左海面を伸ばしてしまった吉迫/大熊は、大きく出遅れてしまいました。

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近藤/田畑は一旦吉迫/大熊の前を切って、右フリートへ寄せました。左海面へ向かう吉迫/大熊とわかれます。photo by Junichi Hirai

 風は弱いながらも、コース全体に広がりだし、至近距離の戦いが続きます。ここから風をうまくつかんで抜け出してきたのは、福岡経済大の冨岡潤貴と関西大、濱中三巌の学生コンビです。成績上の変動はありませんが、思い切りのよい戦略が功を奏し、2位以下に差を広げてトップフィニッシュを飾りました。

 メダルレースの順位は、1位富岡/濱中、2位近藤/田畑、3位原田/吉田、4位岡/内野、5位前田/谷口、6位高橋/杉浦、7位吉迫/大熊、8位長橋/田淵、9位市野/吉見、10位石川/柳川。2位でフィニッシュした近藤/田畑は、女子優勝だけでなく、8位に低迷した長橋/田淵を逆転し、総合3位も手にしました。

「スタート前の愛ちゃんは、めちゃくちゃ緊張していていました。水をものすごく飲むから、そんなに飲んで大丈夫なのかなぁって。あの光景は異常でした。わたしは、まったく緊張してません。スタートからいい展開だったんで、自分たちの走りができように、風を選べたのがよかったです」(田畑)

 近藤は、2007年の全日本制覇に続いて2度目(06年はアジア大会、08年はラジアル全日本出場のため不参加)。田畑は4度目の優勝です(クルー優勝ははじめて)。本シリーズではうまく成績が安定せず、いまひとつ波に乗れなかった近藤/田畑でしたが、有終の美を飾ることができました。チームとしても、ひとつ成長できたことでしょう。

 また、男子優勝の原田/吉田は、
「(成績に影響しない)メダルレースは、他艇の邪魔をしないように意外と気をつかいました。そのわりには、近藤チームにリーバウをバチンと打たれたり(笑)。今回のよろこびは格別な思いがあります。スタートで失敗する場面もありましたが、リカバリがうまくいきました。これは、今年のヨーロッパ遠征で学んできたことです。自分たちが成長できた反面、来年の結果が問われると思っています。大会が終わったら、たのしみにしていたオフ(とはいえ、JISSで筋トレの毎日)、そして沖縄座間味合宿に出ます」

 最後に「もし、去年の自分たちと戦ったら?」と質問すると、「もちろん、コテンパンに叩きつぶします!」と即答。今年の原田/吉田は、470ヨーロッパ選手権で優勝、オランダ世界選手権で3位、そして全日本470で昨年に続いて優勝と、飛ぶ鳥を落とす勢いの結果を残しました。今回の全日本では圧倒的な力を見せつけた原田/吉田ですが、この結果は、彼らが成長しているのと同時に、他チームの実力が落ちている、という見方もできます。原田/吉田に実力差を見せつけられた他ナショナルチームの巻き返しに期待します。

 最後に本大会では、初のメダルレース、全艇スタートの予選、成績速報など、あたらしい試みがおこなわれました。速報に関していえば、フィニッシュボートで成績表を作成し、そのまま暫定成績としてウエブサイトで公開され、選手よりも早く正確に知ることができました。GPSによるメダルレース航跡公開は、データが取れないトラブルもあったようですが、さまざまなチャレンジをした大会実行委員会に拍手をおくります。そして、こうした大会運営による「ヨットレースを伝える」ことがスタンダードになることを願います。

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総合10位ながらもメダルレースでトップフィニッシュを果たした富岡/濱中。福経&第一軍団では、8位に岡/内野、11位に山口/磯崎(福岡第一高2年)、13位に飯束/伊藤、23位に土居/大嶋(土居は来年福岡経済大へ進学)が社会人選手と対等に戦いました。特に、軽風域で活躍した岡、山口は、荒削りな部分も多く見られますが、今後がたのしみな若手です。photo by Junichi Hirai

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女子優勝の近藤/田畑。出艇前のハーバーでは緊張からか、ぼんやりしていた近藤と、いつもと変わらず元気な田畑。レース中は、田畑が近藤をサポートし、好レースをみせました。「今回は本当に和歌ちゃんに助けられました」と近藤。精神面の強化は、彼女たちの今後の課題になるでしょう。photo by Junihi Hirai

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圧倒的な強さで連覇を飾った原田/吉田。「小松コーチの記録を抜きたい(3連覇。優勝合計6回)」と頼もしいコメント。しかし、男女優勝というこれ以上ない結果によろこびながらも小松コーチは「男子は、強引なタクティクスでレースを運ぶ節がある。こんなことをやっていては、同レベル以上の選手と戦う世界では通用しない」と厳しい意見も。バルクヘッドマガジンでは、大会前にアビームチームを特別取材しましたので、あとでまとめて発表したいと思います。photo by Junichi Hirai

◎大会ウェブサイト(成績、どこでもヨットレース等)
http://www.fsaf.net/modules/news/article.php?storyid=56

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posted by BULKHEAD at 07:35| Comment(0) | オリンピック
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