2010年08月31日

インカレ個人戦展望・前編

全日本学生ヨット選手権・個人戦展望(1)
文・外道無量院

 例年、この大会は蒲郡・海陽で開催されるが、今年は学生ヨット総決算の全日本学生ヨット選手権(全日本インカレ)が、その蒲郡・海陽開催という事で、個人選手権は福岡・小戸で9月3〜5日に開催される。

 ご存知の方も多いとは思うが、左手に見える糸島半島と、目の前に聳え立つ能古島に挟まれた水道から吹き込んで複雑に変化する風や、閉鎖的な海面に流込んでくる強くはないが複雑な潮流など、結構、クセのある水面で、総じて、地元勢、もしくは地元経験者が有利ではないか、というのが基本的・個人的な見解である。

 加えて、現在、沖縄付近にいる台風7号と、台湾付近で発生した台風8号がレース期間直前・中に接近する可能性もあり、今後の動きに注意が必要だ。また、「ボーナス得点方式」「ディスカードなし」という、選手にとっては、最終レースのフィニッシュまで一瞬たりとも気を抜く隙がなく、最後まで大逆転もアリの得点方法が採用されている。

 それでは、今年も各水域から有力な選手を拾って優勝候補の選手を展望してみる。

◎470級
 第一経済大〜福岡経済大〜日本経済大と、この4年間で3回も大学名を変えてきたが、ヨットに関しては全日本インカレで470級2連覇中、過去7度の出場中で5度の優勝、この個人選手権・470級に関しても、冨岡、宮川、飯束と異なるスキッパーで現在3連覇中と、不動・不変の三船・岡村コンビの指導体制に支えられ、「470級・クラス特化」で圧倒的な強さを見せる日本経済大勢は今年も健在である。

 九州個選では、1〜4位と6位を独占。指導陣の母校である、名門・福岡大勢をシャットアウトし、創部史上最多の大量5艇を送り込んでくる。そういえば、古い話にはなるが、監督・三船和馬が、小松一憲(1976年モントリオール五輪470級代表、1977年470級世界選手権2位、現・アビームコンサルティング・コーチ)、甲斐幸(1979年470級世界選手権優勝)、高橋幸吉(現・浜名湖ジュニア代表、姉弟妹の3人で4度のIH制覇を果たした礼子、洸志、友海の父)、小笠原憲男(NTT)などの「群雄割拠」で熾烈を極めた激戦の選考シリーズを制し、470級日本代表に選ばれながらも、ソ連軍によるアフガン侵攻で、JOCが出場を取りやめたために、「無念の幻」、となったモスクワ五輪開催から今年はちょうど30年目にあたる。

 さて、優勝を狙える力を持つのは、昨年の王者・飯束潮吹(福岡第一・4年)を筆頭に、昨年4位の岡賢志(高松工芸・4年)、そして新人ながら昨年のインターハイ・チャンプとなるや、以後、直ぐに470に乗り換え、高校時代から全日本選手権、NT選考と出場し、大学生はおろか、社会人セーラーを相手にそこそこ健闘している土居一斗(福岡第一・1年)の3艇だろう。
 
 昨年と比較しても勝るとも劣らないメンバーを揃えて万全の構えだ。今年は地元の開催でもあり、「飯束2連覇」、もしくは狂っても「同大学勢の4連覇」は譲れないところ。特にエース・飯束は、7月にオランダ・スケベニンゲンで開催された世界選手権に学生選手で唯一出場。序盤でつまずき、シルバーフリートとはなったが、シリーズ後半はかなり良い走りを見せて健闘した。

 クルーの配置はまだ未定のようだが、大嶋龍介(東海二・4年)、内野航太(3年・長崎鶴洋)、そして飯束とともに世界選手権に出場した外薗潤平(鹿児島商・2年)と、経験、技術ともこちらも他チームに勝る陣容を整えている。迷い無く飯束艇を不動の大本命、岡、土居の2艇を有力候補に推させて頂く。

 はたして、他大勢から、この強力な日本経済大勢を倒せる存在はいるのだろうか?

 過去3年間、この日本経済大を全日本インカレで最終日・最終レースまでリードして死闘を繰り広げてきた関西学院大からは3艇が出場する。中でもエースで主将の小栗拓也(中村三陽・4年)は一段と成長し、クルーにもエース格の中野裕介(中村三陽・4年)を配して、強風シリーズとなった関西個選を準パーフェクトで圧勝した。

 市野/佐藤組以来、4年ぶりの同大学勢の制覇を狙う。他の2艇もインターハイFJ・国体SS2冠の笠井大樹(啓明学院・3年)、国体SS級チャンプの新人・西尾駿作(関学高等部・1年)と高校時代の実績では、日本経済勢に勝るとも劣らない選手を揃えている。

 だが、ここまでの大学入学以降の「伸び」と、昨秋以降の「新人促成」としての取り組み方、クルーの錬度等を総合的に日本経済大勢と比較すると、今年に個選チャンプを狙えるのは小栗/中野組に限られるか? 他この水域代表は、「6艇枠」の中では最多の42艇参加の中からの勝ち抜けで、他に比べて競争率は抜群に高く、総じて質は高そうだ。

 女子ながら強風得意の大曲昭子(長崎工・4年)や、逆に軽風シリーズなら、昨年の牛窓・全日本インカレのオープニングレースでトップフォーンを鳴らして周囲を驚かせた後藤沙紀(別府青山・3年)の関大勢2艇も、「女子だから……」と言ってけっして侮れない存在だろう。

 90艇という予選最多参加水域の関東勢では、昨年・今年とコンビ固定で楽に関東個選を2連覇を達成した河合龍太郎(塾高・4年)/小川晋平(塾高・2年)組が飛びぬけた存在である。今年こそ、日本経済大勢、関西学院大勢の厚い壁を突き破り、学生チャンプとなってカップに名前を刻む事ができるだろうか? 今回が残された最期のチャンスだ。

 他、僚艇の飯野啓太(塾高・2年)、秋山玄(慶應藤沢・3年)も河合に引っ張られて大きく成長してはいるが、個選チャンプを狙うとなるとまだ、多少荷が重い気がする。ライバルの早稲田からは慶應を数では上回る4艇を送り込んでくる。中でも、横田敏一(中村三陽・3年)、西村元(清風・3年)、市川航平(早大学院・2年)のレギュラー3艇は有力視されるが、河合を除く慶應勢と同じで、上位は伺えても優勝まで狙うには、もう一歩力が足りないか? この中からは、高校時代を福岡で過ごし、海面の特徴を良く知る横田を筆頭候補としたい。

 名門・日大勢は、3、4艇の全出場艇がある程度の同じ力を持ってはいるのだが、まだ残念ながら個選チャンプを狙えるような「エース」が不在の印象。その他では、法政や明治のエースが共にスナイプに転向した事もあって、厳しい言い方をすれば、全体的に「小粒」な印象だ。強力な日本経済大を脅かせるような突出した存在が、慶應・河合以外には見当たらない、と言ったら言い過ぎだろうか?

 全盛期に比べると弱小化した同志社大が、今期は復活を期してシーズン当初から積極的に遠征に出て強化に励む一方で、金沢大の隆盛や京産大、龍谷大の復活気配で、盛り上がりを期待していた近畿北陸水域だったのだが、実質最大勢力の立命館大の6月下旬からの活動自粛による不出場で、一挙に寂しくなってしまった。

 その上、個選、インカレと続いた水域大会の閉会式直後に、あってはならない事故が起きた事を残念に思う。立命館の活動自粛の原因もそうだが、指導者や最上級生には、チーム内の行動規範を徹底し、二度と同じような事故が起こらないように部員の指導を厳しくして欲しいものだ。

 さて、この水域の代表としては、名門同志社大に敬意を表して、エース格の中岡弘章(北嵯峨・4年)の名前を挙げさせて頂くが、個選チャンプ狙いとなると、現実的には厳しいか?期待の新人・奈良大樹(別府青山・1年)も、まだ、父親(近大OB)に敵わない程度。幾らかつて五輪を狙った名セイラーとは言え、こちらが個選チャンプを狙えるのは、その偉大な父親を超えた後であろう。

結論
◎・・・・・・・・・・飯束/外薗組(日本経済大)
〇・・・・・・・・・・河合/小川組(慶應義塾大)
▲・・・・・・・・・・小栗/中野組(関西学院大)
△・・・・・・・・・・岡/内野組(日本経済大)
△・・・・・・・・・・土居/原田組(日本経済大)
△・・・・・・・・・・横田/大矢組(早稲田大)
△・・・・・・・・・・中岡/幸野組(同志社大)
注・・・・・・・・・・後藤、大曲の関西大・女子スキッパー2艇
*クルーの組み合わせに関しては、代わる可能性アリ。

参考:
春インカレ総括(1)関東水域
春インカレ総括(2)関西水域
春インカレ総括(3)近畿・北陸水域
春インカレ総括(4)九州・中国・四国水域

全日本学生ヨット選手権・個人戦展望(1)
全日本学生ヨット選手権・個人戦展望(2)


======================================
わたしたちは走り続けるセーラーを応援します
BULKHEAD magazine supported by
ウルマンセイルスジャパン
丸玉運送
ネオネットマリン
ダウンアンダーセイリングジャパン
ノースセールジャパン
トーヨーアサノ
SWING
コスモマリン
葉山セーリングカレッジ
Gill Japan/フォーチュン
JIB
一点鐘
VELOCITEK
パフォーマンス セイルクラフト ジャパン
エイ・シー・ティー
プラネット・グリーン
ハーケンジャパン
ファクトリーゼロ
シエスタ
posted by BULKHEAD at 21:47| インカレ