2011年12月17日

メディアとヨットレース

 パースISAFセーリングワールドでは、毎晩11時頃までメディアセンターで原稿書き、撮影した写真の整理、配信をおこなっています。メディアの仕事で必要なのは、電源の確保とインターネット接続回線です。ファクスで原稿を送り、プリントアウトされた成績表で順位を確認することも少なくなりました。メディアセンターには専用のWIFIがあり、大量のバッテリーは外部ジェネレーターから引っ張ってきています。遅い回線速度はストレスですが、それを除けば快適な仕事空間といえます。(BHM編集部)

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ノートルダム大学の講堂を借りたメディアルーム。photo by Junichi Hirai

 ほとんどのメディアは、自分が関係するウエブサイト、ホームページだけでなく、フェイスブック、ツイッターを利用しています。割合としては、ホームページ、ツイッターよりもフェイスブックがメイン。どこの国のノートパソコンをのぞいても、フェイスブックページが立ち上がっているぐらいです。

 この4年に一度のビッグイベントに来て、BHM編集部は、少なからず驚きや変化を感じています。4年前に比べていちばんの変化は、「ISAF(国際セーリング連盟)がすすめるテレビ放映、制作の強化」です。実は、メディアといっても、全員が報道を目的としておらず、いくつかのグループがあります。

(1)ISAFと契約する映像(テレビ)制作グループ
(2)大会と契約する広報関係者(公式フォトグラファーは3人)
(3)クラス協会の広報(各クラス1名ぐらいづつ)
(4)各国協会と契約する広報(各国のスポンサー対応)
(5)その他(ウエブメディア、新聞など)

 上記のなかでもISAFの映像制作グループの動きが最優先されています。これは、ご想像の通りにオリンピックを意識した流れであり、今回のベン・エインズリー騒動の裏側でもあります。ベンがメディアボートに乗り込んで、ドライバー、カメラマンに掴みかかったことは重大な過ちであり、彼を目標にする若いセーラーは絶対に真似してはいけないこと。絶対に、です。ベンが世界の子どもたち、若いセーラーに与えた影響は大きく、この69条問題(スポーツマンシップ違反)は、これからも議論されていくと思われます。

 一方、今回の事件は、ヨットレースとメディアのあり方を考えさせるきっかけになりました。問題をおこした、制作会社はISAFの意向により、集客性の高い、人をひきつける映像を撮影しています。それが、「より大胆で迫力のある映像を求めて」エスカレートした状況がありました。ちなみに、ISAFセーリングワールドの帆走指示書では、「(メディアを含む)オフィシャルボート、ヘリコプターは抗議の対象にならない。RRS62を変更する」と記述されています。

 この現在の主流である「競技と映像制作」は、いくつかの問題を抱えています。映像制作のプロはセーラーではありません。他スポーツのように、競技フィールドに境界線のないヨットレースでは、風の強さや風向、波の大小によって、レースコースが大きく変化します。

 そこまで理解している映像製作関係者は、残念ながら存在しないでしょう。ヨットレースを知らない映像のプロ50人近くが、レース海面を走る選手とギリギリの距離で撮影しているのですから、問題ないほうがおかしい。バルクヘッドマガジンが取材に行くときは、国内外を問わず、最初に入手するのは、競技のルールが書かれた帆走指示書であり、これを読み込んでおかないと取材できません。

 普段、ヨットレースに選手として出場している自分でも、470級とRS:X級、49er級の、風域で変化するボートアングルを予測するのはとてもむずかしい。マークラウンディングにはそれぞれのクラスで特長があり、自分の場合は、右目でファインダーをのぞいて撮影しながら、左目で近づいてくるフリートの動きを把握するということをしています(どうしても右海面の状況がわかりにくくなるのですが…)。選手の競技をさまたげることは、あってはならないと考えているからです。

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メダルレースの湾内コース。メディアボートだけでなく、岸壁からテレビ中継、ヘリから空撮がおこなわれます。photo by Junichi Hirai

 レース関係者のなかには、「カメラマンやジャーナリストはいなくていいじゃないか」という意見もあります。実際に、日本の大会では、「レースコース内は侵入厳禁。マークから200メートル以上離れること」などと申し付けられることもありました。カメラを持った方なら分かると思いますが、マークから200メートルも離れてしまったら撮影は不可能なのです。

 わたくし個人の意見では、大会を成功させるためには、選手と大会実行委員会、レース委員会、ジュリー/アンパイア、メディアが、お互いの立場を尊重(リスペクト)しあうことが重要だと感じています。残念ながら、今回、ベン・エインズリー騒動の原因となった、ISAFが仕事を発注した制作会社は、ヨットレースと選手を尊重しませんでした。ISAFとレース運営、そして選手の気持ちに、ズレがあったことは否定できません。

◎Perth 2011 ISAF Sailing World Championships
http://www.perth2011.com/

◎バルクヘッドマガジン・パース2011記事
15. ISAFワールド日本女子躍進
14. トムスリングスビーの領域
13. 近藤田畑、暫定2位へ浮上
12. 470女子の熾烈な闘い
11. フリーマントルの町紹介
10. 470近藤田畑初日トップ!
9. ISAFワールド前半戦終了
8. 470男子、代表持ち越しへ
7. 松永今村、代表候補に王手
6. パース激突、松永対原田!
5. 明暗分けた日本。予選終了
4. サンダーストーム通過
3. 松永今村、初日ダッシュ!
2. パースへ向かう機内にて
1. パースISAFワールド開幕

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posted by BULKHEAD at 12:22| Comment(0) | コラム
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